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    心筋梗塞

 心筋梗塞ってなに?

心筋梗塞とは、冠状動脈の一部の血液の流れがとだえたために、その部分の心筋に栄養や酸素が供給されずに心筋細胞が壊死して激しい心臓発作を起こす病気です。動脈硬化で狭くなった部位に血栓などが詰まって塞がれることが多いようです。

発症して1ヶ月以内のあいだを急性心筋梗塞といい、死亡率が30%以上と非常に高いのが特徴です。一般に動脈硬化の進んだ高齢者に多く、女性よりも男性に起こりやすいといわれています。

心疾患は日本人の病気別死亡順位の第2位ですが、その中でも心筋梗塞によるものが最も多くを占めています。

心筋梗塞は狭心症と併せて「冠動脈疾患」、あるいは「虚血性心疾患」と呼ばれます。「狭心症」は冠動脈が狭くなった状態で心筋がまだ生きていますが、心筋梗塞は狭い部分に血栓ができて冠動脈が完全に詰まった状態になり、心筋が死んでしまうために心臓の収縮力・機能は当然低下します。つまり、壊死をしていない段階を狭心症と呼びますが、この段階で適切な治療が求められます。

心筋梗塞は、心筋が壊死して発作が発症して1ヶ月以内のものを「急性心筋梗塞」、1ヶ月以上経過したのものを「陳旧性心筋梗塞」といいます。

急性心筋梗塞は病変が不安定で、生命のリスクも高いものですが、慢性に移行した陳旧性心筋梗塞になると、壊死した部位は繊維化して病変も落ち着いてきます。

なお、「突然死」というのは、発症して24時間以内に外傷を伴わずに死亡する場合を言います。突然死に占める急性心筋梗塞の割合はきわめて高いものといえます。


 心筋梗塞の症状

急性心筋梗塞の症状は、なんといっても突然起こる締めつけるような非常に激しい胸の痛みです。「えぐられるような」「胸の中が焼けるような」「ナイフで突き刺されるような」「万力で絞められたような」などと表現されます。胸の痛みは、左前胸部からみぞおちあるいは左肩、顎にかけて、放散するのが特徴です。これまでに経験したことのないほどの強烈な痛みのために、冷や汗、呼吸困難、顔面蒼白、むかつき、嘔吐などの症状を伴い、意識を失ってしまうこともあります。発作は数分ほどの狭心症と違って30分以上、時には数時間も続きます。

病状がいったん落ち着いても、1~2ヶ月のあいだにふたたび発作が起きることも多く、2~3週間目に髄膜炎や心嚢炎が起こることもあります。この場合も、胸の痛みが起こり、発熱を伴います。


 心筋梗塞の合併症

心筋梗塞の発症の後に起きる不整脈を合併症と考えるならば、急性心筋梗塞の主な死亡原因は、不整脈のなかでも重大な期外収縮、心室細動、房室ブロックによるものといえます。ただしCCUで直ちに電気的除細動治療が行われれば、急性心不全では致命的といわれる心室細動も助かるようになりました。

そのほか、心不全がおきたり、乳頭筋断裂や心破裂、心室中隔穿孔、心室瘤、自己免疫性心外膜炎などが発症することがあります。これらは頻度は低いものの、発症すればやはり死亡率が高くなります。
こうした急性心筋梗塞の合併症で死亡する人は、全体の数%といわれています。


 心筋梗塞の原因

心筋梗塞の主な原因は動脈硬化です。動脈硬化は血管の異常であり、加齢とともにおこりますが、偏った食生活や運動不足などが長い間続くと、血管内にアテロームという粥状の物質が沈着しやすくなり、血管の内腔を狭くしたり、動脈硬化を促進します。また、動脈硬化が進むと、アテロームの表面を覆っている膜が破れ、そこに血液成分が固まり、血栓を形成します。この血栓が大きくなり、心臓の血管を完全に塞ぐと、心筋梗塞が起こります。

動脈硬化を促進する危険因子には、血液中の余分な脂質が変性してアテローム(粥状物質)の形成につながる「高脂血症」、心臓や血管に余計な負担をかける「高血圧」、細い動脈の動脈硬化を促進したり血液が詰まりやすくなる「糖尿病」のほか、肥満や運動不足、腎不全などがあげられます。

そして、喫煙やストレスは、血圧の上昇や心拍数の増加を招き、やはり心臓に大きな負担を強います。また、男性は女性よりも動脈硬化になるリスクが高く、さらに、加齢とともにリスクが高くなる。生まれつきコレステロール値が高い人や、動脈硬化が進みやすい遺伝形質をもつ人、狭心症発作の経験のある人、痛風などの病気を持っている人に、起こりやすいといえます。


 心筋梗塞の治療法

心筋梗塞の治療法には、予防となる生活習慣の改善、薬物療法、外科的療法などがあり、急性期と慢性期で使い分けます。

●急性期
心筋梗塞の治療は緊急を要します。心筋梗塞の治療は集中治療室での外科手術を含む治療が基本で、手術では梗塞を起こしている冠状動脈を開通させる血管形成術が施されます。その後は安静を保ち対症療法を中心に行いつつ病状の安定を図り、合併症の発生を厳重に管理します。通常は酸素吸入、輸液、モルヒネ、硝酸薬などが中心に用いられます。

●安定期
発症から6時間以内では「再還流療法」が行われます。胸痛が持続する場合ではまずウロキナーゼやt-PAを用いた血栓溶解療法が適応となり、経皮的冠動脈形成術(PTCA)等のカテーテルを用いたインターベンション(PCI)を行うことが多くなります。狭窄部位が3つ以上であった場合などに、緊急冠動脈バイパス造設術(CABG)が行われます。また、再還流療法が成功すると不整脈が発生することが多いので注意が必要です。

CCUでの治療は、早期に冠動脈再疎通療法を成功させ、速やかにCCUへ収容、合併症の治療・予防を行い、心臓リハビリテーションを開始することです。

冠動脈再疎通療法とは、血栓で詰まっている冠動脈を再開通させる治療です。以前は血栓溶解療法といって血栓を溶かす薬を使用する治療がよく行われましたが、最近はバルーンにより血管を広げる治療(風船治療:経皮的冠動脈形成術)が主流で、冠動脈造影検査に引き続き行われます。場合によってはステンレス製の筒を冠動脈内に設置し、再閉塞を予防する治療(ステント治療)も行われます。


 心筋梗塞の予防策

心筋梗塞は生活習慣病です。つまり、間違った生活習慣が招く病気であり、同様に生活習慣が原因で発症することの多い高血圧や糖尿病などが危険因子となります。高血圧や糖尿病になると、血管壁が傷つくため、動脈硬化を引き起こしやすくなります。生活習慣や食習慣を見直し、肥満を防ぎ、規則正しい生活を送ることが大切です。

塩分をとり過ぎると高血圧を招き、肉や卵などのコレステロールの多い食生活は動脈硬化を招きます。塩分を控えるとともに、コレステロールの吸収を妨げ蓄積を防ぐ野菜や海藻類など、繊維質の多い食品をとるようにします。また、激しい運動は心臓に負担がかかるため危険ですが、適度な有酸素運動を行うと、血圧が下がる、高脂血症や動脈硬化を防ぐ、ストレス解消になるなどの効果が期待できます。

睡眠不足も心臓病の危険因子の1つであるという研究報告があり、心身の疲れをとりストレスをためないためにも睡眠は十分にとることが大切です。また、たばこを吸うと、血圧や脈拍が上がり、血流が悪くなるので、動脈硬化になりやすいなど、心臓病のリスクが高くなることが知られています。

【生活習慣改善ポイント】
● 過食に気をつけ、腹八分目を心がける
● 脂身の多い肉や乳製品など動物性脂肪の食べ過ぎに注意する
● 塩分の摂りすぎは血圧を上昇させるので、一日の摂取量を10g以内にする
● アルコールは飲み過ぎないよう気をつける
● 喫煙している人は直ちに禁煙する
● 適度な運動はHDLコレステロールを増やし動脈硬化を予防する
● 睡眠、休養をしっかりとり、ストレスをためないようにする
● 狭心症既往の人は心筋梗塞になる可能性が高いので、より一層の注意が必要